小児皮膚科

小児皮膚科について

小児皮膚科について

お子様の肌は、まだ未熟で大人に比べてとてもデリケートなだけに、トラブルを起こしやすく、特別な注意を要します。また、同じ疾患でも大人とは異なる臨床症状を呈することも少なくありません。当院では、しっかりと診察した上で、丁寧で分かりやすい説明を心がけながら、お子様お一人お一人に合った皮膚科診療を行います。

以下に主にお子様によく見られるお肌のトラブル(疾患)についてご説明いたします。

アトピー性皮膚炎

アトピー性皮膚炎の診断

アトピー性皮膚炎は、痒みを伴い、慢性に経過する湿疹病変を特徴とします。外来ではよく、「うちの子はアトピーですか?」とお母様からご質問を受けることがあります。
しかし、初診で一度皮疹を拝見しただけでは、はっきりとお答えできないケースが多くあります。アトピー性皮膚炎の定義にある、慢性・反復性とは、いったいどのくらいの期間をさすのでしょうか?乳児では2ケ月、それ以降の患者様では6ケ月以上とされており、つまりある程度の期間、経過を見なければ診断することはできません。ですから、きちんとかかりつけ医を見つけて定期的に受診し、皮疹の経過を見てもらうようにしましょう。

アトピー性皮膚炎の症状

生後2ケ月から思春期頃までは、皮脂の分泌がほとんどないため、皮膚の表面を覆う皮脂膜はないに等しく、非常に乾燥もしやすくなります。乾燥すると、外からの刺激に敏感になり、皮膚炎を生じやすくなります。皮疹は、基本的に左右対称性の分布を示すことが多く、年齢と共にその場所が変化していきます。乳児では、頭・顔に始まり、しばしば体幹・四肢に、幼児・学童では首や関節部に好発します。赤くカサカサしたり(紅斑)、ブツブツ(丘疹)や、引っ掻き傷とともににかさぶた(痂皮)なども見られます。
早ければ乳児期までに、多くは思春期頃までに、日々のスキンケアや適切な治療で症状が軽快もしくは寛解します。

日常生活での対策

アトピー性皮膚炎のお子様をもつお母様によく、「原因はなんですか?」「食事はどうしたらいいですか?卵は食べさせていいですか?」などと聞かれることがあります。勿論、血液検査でアレルギーの有無をある程度調べることは可能です。しかし、検査で分かるのはごく一部であり、検査で陽性にでたからといって、必ずしもそれが原因だと飛躍した思い込みをするのは間違っています。逆に、血液検査で陰性でも、食べたときに症状が悪化する場合には、その食べ物は避けたほうがよいと言えます。つまり、実際に食べてみて症状が出るか、その後やめてみて治るかどうかを見ることが重要です。

ただし、アトピー性皮膚炎は、アレルギー体質、敏感肌、環境など様々な事象が要因となり得るので、食物アレルギーの考えに凝り固まると、無理な食事制限をしたり、自分を追い詰めることになり兼ねません。まずは、できる範囲で環境を整え、日々のスキンケア(清潔と保湿)を習慣づけることが大切です。

アトピー性皮膚炎の治療
1.スキンケア

まずは、日々のスキンケア(清潔と保湿)をしっかり行う必要があります。汗や汚れも刺激になりますので、清潔を保つ必要がありますが、洗いすぎには注意が必要です。手のひらでしっかりと泡をたてたら、そのまま手のひらで泡をクッションにして優しく洗いましょう。
また、石鹸やシャンプー・リンスなどのすすぎ残しは刺激になるので、十分に洗い流す必要があります。そして、入浴後5分以内には、保湿剤を全身にしっかりと塗るようにしましょう。動き回るお子様に、毎日保湿剤を塗るのはなかなか大変なものです。お母様にとってストレスのない方法で、お子様のスキンケアを続けていける方法を一緒に探すお手伝いをいたします。

2.ステロイド外用

ステロイドの塗り薬に抵抗感をお持ちの保護者の方が少なくありませんが、症状に応じて必要な量を必要な期間だけ使い、症状が軽くなったら薬を減らしたり、弱いものに変えたりするように適切に用いれば心配はいりません。また、ステロイドを塗ると皮膚が黒くなるというような誤った情報をインターネットなどで見かけることがありますが、それはステロイドの副作用ではなく、炎症が長く続いたために起こる「炎症後色素沈着」なのです。この炎症後色素沈着を残さないためにも、医師の指示通りステロイド外用剤を適切に用いて治療することをお勧めします。

とびひ(伝染性膿痂疹)

とびひとは?

とびひは、あせも・虫刺され・湿疹などを掻きこわした傷や、すり傷などに細菌が感染することによって発症します。水疱型と痂皮型に大別されますが、ほとんどが水疱型で、夏期に乳幼児から小児に好発します。黄色ブドウ球菌が感染して、非常に痒みの強い水ぶくれができ、引っ掻くことで容易に水疱内の細菌が「飛び火」して、他の部位にも急速に拡大します。

とびひの治療

原因菌に対する抗生物質の内服、外用を行います。浸出液が多い場合には亜鉛華軟膏を、痒みが強い場合には抗アレルギー剤の内服や、ステロイド外用剤を用いることもあります。いずれの外用剤も、外用後は必ずガーゼなどで患部を覆うようにしましょう。そして、入浴時には泡立てた石鹸で患部を洗い、シャワーで十分に流すことが大切です。感染力が強いので、兄弟がいる場合には、ほかのお子様たちのあとで入浴を行うようにし、タオルの共有は避けるとよいでしょう。

イボ(ウイルス性疣贅(ゆうぜい))

イボは、医学的にはウイルス性疣贅(ゆうぜい)と言い、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV … ヒトパピローマウィルス)の感染によって生じます。HPVは正常の皮膚・粘膜には感染せず、小さい傷などを介して感染し疣贅を形成するため、外傷を受ける機会の多い手のひらや足の裏、指先などに好発します。特に小児の場合には、「ミルメシア」という、痛みを伴い、一見魚の目のように見えるイボが手足にできることがあるので、覚えておきましょう。
その他、アトピー性皮膚炎児では、皮疹を繰り返しやすい肘や腋窩などに、独特の分布・臨床像を呈することがあります。イボの治療は、液体窒素による凍結療法が基本です。通常1回で治ることはなく、1~2週間毎に根気強く繰り返し治療する必要があります。

水イボ(伝染性軟属腫)

水イボは、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV … ヒトパピローマウィルス)とはまた異なるポックスウイルスの感染によって発症します。水イボに罹患したお子様との直接的な接触だけでなく、バスタオルやスポンジ、ビート板などを介して感染し、直径数mmまでの表面がツルツルした光沢のある盛り上がりとなって皮膚に現れます。このウイルスに対する免疫を獲得すれば、自然に治癒しますが、それには数か月から多くは1年以上を要する場合も多く、その間に掻き壊して周りに拡大していくケースも少なくありません。伝染力が強く、増えていくスピードが速いので、数が少ないうちに見つけて積極的に取っていくことをお勧めします。
近年、ペンレスという麻酔のテープが保険適応になりました。処置時に用いることで、痛みをかなり和らげることが可能です。当院でも取り扱っておりますので、お気軽にご相談ください。

おむつかぶれ

尿や便に含まれるアンモニアや酵素などが刺激となり、おむつの当たるところに赤いブツブツやただれが出来ます。おむつをこまめに替えて、お尻の清潔と乾燥を保つことが予防にもケアにもなります。おむつ替えの際には、おむつをはずした後、少し乾かしてからおむつをつけると良いでしょう。
また、清潔を保つのは重要ですが、洗いすぎには注意が必要です。石鹸をつけて洗うのは1日1回とし、すすぎ残しのないように十分に流しましょう。便の回数が多い新生児や下痢の時には、市販のお尻ふきにオリーブ油を加えて、優しく拭き取ることをお勧めします。それでも、かぶれてしまった時には、亜鉛華軟膏やワセリンで保護しますが、症状がひどいような場合には弱いステロイド軟膏を使用します。数日ケアをしてもよくならない時は、カンジダ皮膚炎の可能性もあります。自己判断せず、必ず経過を見てもらいましょう。